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2019-11-08
2019-11-08

税理士が解説|チュートリアル徳井氏の事件から見る税務署対応

2019 11 08 tax

チュートリアル徳井さんが国税局より1億2千万円超の申告漏れの指摘を受けたことはニュースで皆さんもご覧になっていると思います。なんとなく話では聞いたことがある税務調査ではありますが、実際に税務調査を経験された方はごく少数かと思います。今回は、徳井さんのケースを解説しつつ、税務調査の流れや頻度についてご説明して参ります。

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著者(たちばな税理士事務所の公式サイト)

1:チュートリアル徳井さんの脱税はなぜ税務署にバレたのか?

税務署は地域ごとに設置されているのですが、それぞれ担当エリアが決まっていて、そのエリア内の会社や個人事業主の方の申告書がちゃんと提出されているか、提出された申告書は正しいか、申告書に記載された税額はきちんと納められているか、などなど日々税金に関する管理・監督をしています。

エリア内にあるすべての会社や個人事業主の方がちゃんと申告期限までに正しい申告書を提出して、ちゃんと納税を済ませていれば話は早いのですが、中にはそうでない会社や個人事業主の方もいらっしゃいます。

ちゃんとやっている方がいる一方、ちゃんとやっていない方がいては、税金の負担に不公平が生まれてしまいます。そこで、税務署はちゃんとやっていない方を把握し、正しい申告・納税をしてもらえるように働きかけています。

そのため、エリア内の会社の決算月や申告月をすべて把握しています。申告月が近づくと各会社には、申告書フォーマットと納付書が送付されてきます。そこには、決算月や税金の納付期限がしっかりと記載されています。

「忘れていた、知らなかった」は、もちろん通用しません。

そのような状況の中で、申告を怠れば当然に税務署はその事実を把握することになります。

ましてや、会社であればほぼ100%と言っていいほど税理士がついているはずですので、期限内に税務申告を済ませるための努力をしています。期限を過ぎても申告書すら提出されていない会社があれば、税務署内でも非常に目立つ存在であると言っていいと思います。

何故、預金差し押さえまでに発展したか?

記者会見やニュースの記事を拝見すると、情報が錯綜しており何が事実かは判断が難しいところではありますが、徳井さんの会社は、今回指摘された3年間の無申告の前にも、同様に無申告だった期間があり、その時も税務署に指摘を受けていたそうです。

その際には、期限を過ぎて3期分の申告書は提出したようなのですが、肝心の納付を済ませてなかったため、会社の預金口座を税務署に差し押さえられたとの記事がありました。

税務署は、会社や個人事業主の方が申告書を提出した後、その申告書に記載された税金を納めなかった場合には、会社の財産を差し押さえることが権利として認められています。

ただし、ある日突然会社や自宅に税務署の職員の方が大勢やってきて、ドアを打ち破って現金やブランド品やアクセサリー類を差し押さえるようなことはありません。

事前に書面通知や面談を通じて、顧問税理士へ連絡があります。

その段階で、一括で現金で納税をするのが原則ではありますが、納税計画表を作成し納税の意欲を示すなど、コミュニケーションをとることができれば、ケースによりますが差し押さえにまで発展することは基本的にはありません。

徳井さんのケースでは、そのような対応をしてくれる顧問税理士を雇わず、税務署からの通知や連絡が来てもなお誠実な対応をしなかったため預金の差し押さえや、税務署の更に上位の機関である国税局が対応するに至ったものと思われます。

税務申告を忘れるとどうなる?翌年申告すれば問題ない?追徴課税は発生する?

会社は決算月を迎えると原則的にはその2か月後に申告書を税務署に提出することになっています。

この決算月は、一般の方で言えば、誕生日であったり、クリスマスや大晦日くらい特徴的な日なので、うっかり忘れるということは基本的にないと思います。ただ、あまりの忙しさや体調不良などの事情により申告月までに申告書を提出できないという事態は起こり得るかもしれません。

徳井さんの場合は、記者会見の中で、「想像を絶するルーズさで、決算の準備を怠り、来年まとめて申告すればいいやと思っていました。」と仰っていましたが、期限後となってしまう場合でも、なるべく早く申告を済ませる努力が必要となります。

なお、申告期限を過ぎてしまった場合には、通常の納税額に加え、

無申告加算税5%と延滞税14%程を追加で納付するペナルティがあります。

また、2期連続期限内に申告がなされなかった場合には、青色申告の優遇措置を受けれなくなってしまうので、その点でもペナルティが大きいです。どんなに忙しくても期限内に申告するよう頑張りましょう。

1-3 追徴課税が発生するタイミングや金額

徳井さんの記者会見では、「追徴税額も含めて既に納付済みです。」というフレーズがありました。この聞きなれない追徴税額とは、いわばちゃんと申告書を提出しなかったりちゃんと納税しなかった方へのペナルティです。

ちゃんと申告をしている方が馬鹿を見ないように、種々のペナルティが用意されています。概要をご紹介いたします。

無申告加算税

申告書の提出が、申告期限を過ぎてしまった場合の罰金です。自主的に申告をすると+5%、税務署からの指摘を受けてから申告をすると+15%~20%の税金が本来納めるべき税額に上乗せされます。期限内に申告した方がよいですね。

延滞税

税金の納付が、納付期限を過ぎてしまった場合の罰金です。1年以内の遅延であれば+約7%、1年を超えてしまうと+約14%の税金が本来納めるべき税額に上乗せされます。納期限内に納付した方がよいですね。

過少申告加算税

納税額を誤って少なく計算してしまった場合の罰金です。自主的に修正をすれば課されませんが、税務調査後ですと+10%~15%の税金が本来納めるべき税額に上乗せされます。ちゃんと税金は計算した方がよいですね。

重加算税

申告内容にウソがあった場合の罰金です。+35%~40%の税金が本来納めるべき税額に上乗せされます。ウソは絶対にダメですね!

2:税務署は脱税をどうやって見つけるのか

徳井さんのように3期連続無申告であれば、脱税の事実は誰の目から見ても明らかですが、毎年申告をしている会社でも脱税が発覚することがあります。

その大半は、税務調査を通じて脱税を把握することになります。

税務調査は、日々の事業活動を記録した会計帳簿の確認や、その会計処理のもととなる証憑書類(しょうひょうしょるい、請求書やレシート、通帳などを指します)の確認を中心に、一般的には2日間に渡って行われます。

1日目の午前中に社長から事業全体の内容や流れを税務署の調査官が確認し、1日目午後と2日目午前中をかけて上記の会計帳簿や証憑書類の確認を行います。

気になる点には付箋を付けて、コピーを取り、確認した記録として税務署に持ち帰られます。

この確認の時間中は、顧問税理士が税務署の調査官からの質問に答えたり、根拠となる資料を準備したりと対応します。

その場で解決できない問題は後日回答することとなったり、2日目の午後に社長に直接確認したりします。

3:国税局は「所得隠し」と「申告漏れ」の違いをどうやって判断するか

徳井さんのケースでは、3年間の無申告の他に、過去に遡って2,000万円の「所得隠し」があったと報じられています。

直近3年間の無申告は、国税局の判断は定かではないのですが、記者会見を見る限りでは「申告漏れ」との判断をされたようです。

これは、徳井さんの言う通り、ちゃんと申告するつもりはあったのだけど、後回しにして行っていなかった、単なる計算ミスで税金を納めていなかったとような騙そう・隠そうという意図がない場合が当てはまります。

一方で、2,000万円の経費を認めなかったものについては、私服の購入代金を経費に計上したり、趣味で購入した腕時計を経費に計上したり、プライベートの旅行を経費に計上したりと、意図的に税金を抑えるために経費に含めていたと国税局は判断したようです。

徳井さんの記者会見では、テレビ収録を私服で行うこともあるので衣装として経費になると思っていた、時計も収録時に付けているので衣装(アクセサリー)として経費になると思っていた、旅行も芸人はいろいろな行動をしてネタを集めて話をするものなので経費になると思っていた、と説明していました。

確かにこの説明には一理あります。

実際に仕事とプライベートとの両方を兼ねた経費というのは多く存在します。

今回問題となったのは、おそらく仕事ともプライベートともとれる支出のすべてを経費にしてしまったことにあると考えます。

例えば、洋服のうち仕事とプライベートの両方で使うようなものであれば、1週間のうち1回は私服で仕事をするなら、購入代金の14%程度(1日/7日)を経費にするなど、按分して経費にすることが必要でした。

多少手間ではありますが、仕事とプライベートの両方で使える物を購入したときは、このように事実に基づいて経費を按分することで、「所得隠し」と判断されるケースは少なるなるものと思われます。

4:税務調査って一般的にどういう周期で何を見られるか?

よく顧問先より「税務調査って実際どのくらいの可能性でどんな頻度であるものなのでしょうか?」という質問を頂きます。

正直なところ、予測は不可能です。20年間、1度も税務調査を受けたことがない会社もあれば、3年に1回必ず調査がある会社もあります。

なので、いつ税務調査があっても良いように資料をしっかり用意し、保管しておくことをおススメします。ただ、経験値としましては、売上高が1億円を超える会社については、周期的に税務調査を受けているように思います。頻度はだいたいが3年に1度のペースです。

5:個人で税務署対応は可能か

税務調査は、必要な帳簿や証憑書類が整っていれば、経営者や個人事業主の方が直接対応することも可能ではあります。

ただ、売上や軽費の計上方法や金額の決定、更には申告書の作成に至るまで税務に関する専門知識をかなり要することになります。もし相応の知識やご経験がないと、税務署の方が何の説明をしているのか理解が難しく、納得がいかないまま高額な税金を納めることにもなりかねません。

顧問税理士を雇っている方はその税理士へ、もし顧問税理士を雇っていない場合であっても税務調査から対応してくれる税理士もおりますので、税務調査の連絡が税務署からあった場合には税理士にご相談されることをおススメします。

6:徳井さんのケースに見る税理士の役割

自身も税理士として活動しているため、徳井さんの税務調査や記者会見は非常に興味深く拝見させて頂きました。

感想としては、徳井さんの今回のケースは、未然に防ぐことが出来たはず、というものです。

徳井さんは、決算の際に1年分の資料を税理士に提出し、申告書を作成してもらうという、いわゆる「スポット契約」をされていたようです。このスポット契約は、日々の相談などが出来ない代わりに費用が安く済むので(徳井さんの場合は、結果的には割高になっていますが・・・)人気の契約形態ではありますが、問題もあります。

クライアントとの接触の機会が決算時期の1回だけなので、税理士としてはお客様の状況が把握しきれなかったり、納税額が決算書を作成してみないと分からず事前に納税資金の準備などが後手に回ることが多々あります。

また、お客様にとっても、レシート類や領収書の整理は思いのほか大変なのですが、1年分ため込んでいるので、いつまでたっても資料がまとめることが出来ません。

税理士としては、顧問契約を結んでいれば、「お客様のような高額所得者の方は、しっかり申告書を提出して適正額を納税しておかないと、罰金がかかるだけではなく、事件として扱われて本業にも支障が出るのでしっかりやりましょう」と事前に税務リスクや資料をまとめるコツなどを伝える機会を持つことも出来ます。

ただ徳井さんのような著名な方がお客様であれば、税理士としては、仮に顧問契約がなかったとしても、煙たがれたとしても、ちゃんと申告・納税を済ませられるように、事前に促したりリスクをお伝えするくらいあっても良かったのではないかと思っております。

以上になります

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