SIや業務系SESの業界構造や働き方

システムエンジニアとして働く際によく聞くのが SI(システムインテグレーター)とSESというキーワードだと思います。
今回SIとSESの業界構造や報酬形態・働き方などを記載していきます。
執筆者プロフィール
法人営業8年→人脈なし・非大卒・未経験からエンジニア(約2年半)→個人事業主のエンジニア(約10ヶ月)→法人化した人 5次受け客先常駐SESの経験あり
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SI(システムインテグレーター)とは何か
システムを開発して欲しい企業から報酬をもらい システムを開発する事を生業とする企業の事です。
企業規模の大きさは様々ですが、大企業になると 富士通やNTTデータNECなどがSIに該当します。
保険や銀行の関連会社としてのSIもあり
その場合は銀行名+システムみたいな感じの社名があります
SIの報酬形態
契約形態は請負契約と言われ、
システムを完成させるといくら支払われる形です。
請負契約はシステム完成義務があるので、完成しないと訴訟や損害賠償が発生します。
何が何でも契約通りにシステムを完成させなければなりません。
その為、通常は資金的に体力がある会社でないと、システム開発で請負契約は結ばれません。
ただ、責任に伴うだけの売り上げはあり、金融系のシステム開発の場合は、1年の開発プロジェクトで売り上げが2桁億円などはざらにあります。
さらに開発後にはシステムの保守契約を結びますので、システム保守の5年契約で追加で何千万と言った形で、開発後にも
高額の売り上げが発生します。
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ここで問題が発生します
大規模プロジェクトでは売上に伴って、開発規模も大きくなり、 それに伴う人員を投入しなければいけません。 しかし開発人員を自社で常用雇用するとそれだけ企業側は人件費という固定費用を毎月支払う必要もありますし、 日本は正社員を首にする事が非常に難しい国です。
正社員を雇いすぎるとプロジェクトを受注できない場合は最悪会社が倒産するかもしれません。
またプロジェクト期間中にサブプライムローンやコロナウイルスなどの急激な不況になるとプロジェクトの売上も縮小した際に、正社員を抱えていると仕事はあれど赤字状態になります。
では、どうするかというと、
プロジェクト毎に人を集めてプロジェクトが終わる・もしくは景気変動によって適時人員を調整する という事を正社員ではない、外部の人間を活用し実現します。
この外部の人間を派遣するのがSES(System Engineering Service)と言われる会社の業態です。
また上記からSIに所属するいわゆる元受会社の社員は、エンジニアにも関わらず業務でコードを書きません
それは下請け(SES)の仕事です
SI社員の大部分の仕事は下請け社員の予算とプロジェクトの進行管理で、エンジニア的な仕事はシステムの要件定義や設計だけです
システム開発の専門家と言われるSIが実態はコードを書かず下請け管理というのは皮肉な話かもしれませんが、実態はこれが真実です。
なお良いか悪いかは人それぞれですが、SIは大企業の為給料も高くWeb系企業でウェイウェイやるよりはSIの方が安定性はあります。
SIerへの転職を検討されている方は大手SIerへ転職できる人を現役エンジニアが解説も合わせてご確認ください。
SES(System Engineering Service)とは
こちらも企業規模は様々ですが、前述したSIへ自社の社員を派遣する企業の事を指します。
イメージ的にはシステム開発の派遣会社です。
報酬形態はSIが受注したシステム開発プロジェクトへ 自社の人員を派遣し、1名派遣する毎に毎月の売り上げが○十万という人月商売という商売になります。
派遣免許を取得していないのに、準委任契約で社員を実質派遣する企業が多数あり、これもSESの問題の一部です。
業態として、人員を採用し上流の企業に社員を派遣すればいいので、未経験の人員募集も盛んですので、未経験からエンジニアを目指す方の7割程度はこの業務系SESの企業に入社する事になります。
未経験で入社できるのは従業員50人〜10人程度の 零細SESになり、給料も安く業務内容も何をするかは現場により自身でコントロールする事ができません。
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SESが問題になるのは、以下のような問題点があります
SESの問題点
SESの問題点は以下になります。
1:多重派遣や多重下請けによるピンハネが行われる
2:準委任契約なのに、請負契約のような偽装請負が常態化している
3:キャリアアップに運要素が発生する
4:どこに所属しているかのアイデンテティが分からなくなる
1:多重派遣や多重下請けによるピンハネが行われる
元請けや2次受けが100万で1名人員を募集すると 間に入る企業が20%ずつマージンを抜き、 最終的に作業を行う5次受けの企業は60万程度の報酬になるなど、作業を行わない企業が
間に入るだけで、マージンを取ります
ここら辺は反SESで名高いアクシアの米村社長の記事に詳細があります
2:準委任契約なのに、請負契約のような偽装請負が常態化している
SIに所属する社員が、SESの会社から派遣された下請け社員の勤怠に口出ししたり、業務指示を行う事は法律で禁止されます。
具体的にはSIの社員が下請けSESの社員に、
・夜間対応を指示
・毎朝何時に出社する ・スーツの強制やネクタイや髪色
・毎日の残業対応
・休日出勤
・常駐の強制
を指示する事は違法です
これらの業務指示を行なっていいのは派遣契約か、雇用契約を結んでいる社員かどちらかです。
しかし業務系のSESの場合これが状態化しており、 上流の企業が下流に業務や残業・休日出勤指示を出し、下流SESがそれに反発する事はできません。
それを自分の所属している会社も守ってくれません。
最近ではコロナウイルスで
上流のSIはリモートワークをしているのに、
下流のSESが客先常駐を強いられる事も問題として出ています。
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withコロナでも客先常駐開発はなくならない|SESエンジニアは転職すべし
SESの会社が派遣契約をしないのは、
派遣法では多重派遣を禁止しているので、派遣契約では前述した
SES会社がさらに下請けのマージンをピンハネする事ができません。
またSIはだいたいが大企業なので新規取引するにも時間がかかりますし、
業者の与信管理をしっかりしたいので、 下請けを集める会社は、1つにしぼりたいという思惑があります。
その下請け窓口がさらに下請けから人を集めるといった方が都合がいい為、両社の思惑が合致しこのような偽装請負が発生しています。
断言しますが、SESの99.99%は偽装請負です。
3:キャリアアップに運要素が発生する
未経験から入社できるSESは多数存在しますが、未経験から入社できるSESの企業で行える業務は
1〜2年ほどテスト工程で、テスト結果をエクセルで貼り付けるやサーバーの監視業務
2年目で簡単な製造工程(コーディング)ができれば いいといった形でコーディング業務までの道のりが長く
運が悪いと3年間テスト業務などもあります。
こういった業務はいざ転職しようとしてもスキルとして評価されないので、自分で努力しないと
文字通り、キャリアが詰みます
実際運なので、運がいい人は1年目からコーディング業務などを行えますので、そういった経験をされている方はSESを勧めてます。
4:どこに所属しているかのアイデンテティが分からなくなる
私は5次受け下請け社員の時は自社の社名を元受に聞かれて、 そのまま自社の名前を伝えたら、
後から上流の3次受けの企業から「元受に社名公開はするな」という糞みたいな言葉を受けました。
これはマージンだけ取る業者が間に入っているので、
その会社の必要性を元受が感じると
間の会社を排除されるから という理由がありました。
その為私は別の会社名を名乗っていましたが、こうなると 商流が曖昧な為、自分がどの会社に所属しているか
全く分からなくなります
さらに実際客先常駐が殆どですので、自社の社員より現場で関わっている人間の方と過ごす時間の方が多くなります。
給与などの評価体系になると、自分の現場にいない
名義上の上司が自分を評価するといった事も発生します
評価と言われても、
自分の仕事ぶりを見たことがない人間が評価を行うのですから
本末転倒です
こうなると自分の会社が何で、誰が上司かも分からなくなり アイデンテティがなくなります。
こういった場合に、自走して問題解決できる自信があり、金を求めるならフリーランスを勧めています。
SESの働き方は変わりませんが、圧倒的精神自由度と金銭が手に入ります。不況時にどうするかと言う問題もあるので詳細は以下をご覧下さい
SESからフリーランスになる際のメリットとデメリット|法人化した人間が解説
なぜSES業態の会社がなくならないのか
参入障壁が非常に低い為です
SESは自社の社員を客先で働かせるため、オフィスも小規模でいいですし、PCは顧客が用意してくれるので、初期投資も殆ど必要ありません。
また、派遣業者には存在する、最低限の資本金の規制なども存在しません
資本金は1円でも会社は設立できますし、前述通りSESは客先常駐の為、社長のPCと会社口座だけ保持していれば誰でもできます。
※派遣会社は2,000万の自己資金が必要
自社にエンジニアがない場合は他社からエンジニアを調達し、マージンをピンハネして売り上げを獲得する事も可能です。
上記から参入障壁も低く人を右から左に流すだけで、売上を計上できるので、SESの会社はなくなりません。
さらにIT投資に理解のない経営者
社員を首にできない日本の社会構造
自社で常用雇用者を増やさず、リスクを取らないSI
など日本の社会構造も原因にあります。
その為、多数のSES業態の企業が存在します。
彼らの脳内はどうなってるかは前述のAxiaの代表の米村さんが記載しています
残念ながら、未経験からエンジニアとして就職された方の7割はこういった零細SESへの入社となります。
客先常駐SESで働くメリット・デメリットもあわせてご覧ください。
直近SESで勤務しWebに転職された方のインタビューも参考にしてみてください。インタビューとしてメリットデメリットが記載されています。
新卒から6年間業務SESで勤務された方のSESの実態をインタビュー
SESへ入社して実力を上げれるかは以下の記事をご覧ください
職歴を作るためにSESに就職してWeb系エンジニアへ転職は可能か
以上になります
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